弁護士 川久保 皆実 オフィシャルサイト

第1回テレワーク実務研究会の実施報告

2020年6月11日、様々な業種・規模の企業のテレワーク推進担当者6名にお集まりいただき、第1回テレワーク実務研究会をオンラインで実施しました。

テレワーク実務研究会とは、テレワークの実務上の悩みについて、参加者同士が互いにノウハウを共有し合いながら解決することを目的とした会です。

私は、2016年頃からテレワークに関心を持ち、日本テレワーク学会や日本テレワーク協会の活動に参加するとともに、労働法の弁護士として、テレワークの労務管理についての執筆や講演を数多く行ってまいりました。

その中でとても強く感じてきたのは、単にテレワーク勤務規程などのルールを作成したり、ICTツールやセキュリティシステムを導入するだけでテレワークが上手くいく訳ではない、ということです。

テレワーク導入前・トライアル段階・本格導入段階、それぞれのフェーズで、企業の担当者は大小様々な課題に直面します。
そして多くの場合、その課題は他のテレワーク実施企業でも同様に発生していたりします。

そこで、課題を自社の中だけで抱え込まずに他社のテレワーク推進担当者から気軽に話を聞ける場があれば、現場レベルで非常に役に立つのではないかと考え、テレワーク実務研究会を企画しました。
まずは私の知り合いを集めて和気あいあいと実施しておりますが、もし参加されたい企業担当者の方がいらっしゃいましたら、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。



第1回テレワーク実務研究会での議論内容のご紹介

テレワーク実務研究会では、参加企業の抱えるテレワークの課題を事前に参加者で共有し、当日は一つ一つの課題について参加者同士ノウハウを出し合いながら議論します。

ここでは、第1回の議論内容を少しだけご紹介します。


【課題1】経営者が抱く「物理的に集まることの価値」という神話をどのように覆すか?

  • 経営層に対してテレワークのメリットを理解してもらうための説明資料として、総務省「働き方改革のためのテレワーク導入モデル」6頁目~が参考になる。

  • 経営層同士で話してもらうと効果があったりする。(ボトムアップの説得は労力かかるし上手く行かないことが多い。)
    →同業種・同規模でテレワーク推進に積極的な会社の経営層に対談をお願いするとか、経営層が集まる会合(※)に参加してもらいそこで他の経営者の話を聴くとガラッと意識が変わることがある。
    株式会社ワークライフバランスにて、経営者向けのセミナーや会合を企画している。

【課題2】在宅勤務ができない業務についている社員の不公平感についてどのように対応するか?

  • 自社の場合、在宅勤務制度導入を全社的なワークスタイル変革の中の一つとして位置づけ、在宅勤務ができない業務についている社員についても、在宅勤務以外で働き方を改善していっている。
    また、在宅勤務導入検討段階で、導入についての議論内容を社内報で伝えたり、非対象者も含めてアンケート調査をするなど、非対象者も議論に巻き込む工夫をした。

  • 出社する社員に対して「出社手当」を支給している会社もある。

  • 社員に実際に話しを聞いてみると、自宅よりも会社で仕事したい、と考えている社員も一定数いる。在宅勤務できない社員が必ずしも不公平感を抱いているとは限らないので、その点はきちんと意識調査をしてから対応すべき。

【課題3】「在宅=サボっている」という感覚をどのように除去するか?

  • 在宅でもきちんと働いていることを理解してもらうには、業務の見える化が最も有効。出社してもサボっている人はいるため、「在宅勤務だから業務の見える化が必要」という訳ではなく、在宅勤務でも出社でも同じように業務を見える化していくべき。

  • 経営層が本当に心配なら、在宅勤務者のPC画面をランダムにキャプチャーし、管理者が確認できるようにするツールを導入する手もある。だが、社員側からは監視されている・信用されていないという反発が出うる。

  • テレワークする際は、事前に業務予定を上長に伝え、事後にその予定について実績を示す、という運用をしている。

  • 社内のガイドライン上で、チャットを送っても10分以上応答がないことが複数回続くと、テレワークに適していないと判断しテレワークを許可しない、という基準を作った。

  • 実際は、在宅勤務ではサボるよりもオーバーワークになる人の方が多い。

【課題4】緊急事態宣言解除後の出社制限はどのようにしている?

  • 出社比率を7割程度にし、出社した社員は密にならないよう会議室などの空き部屋で業務することも可能にしている。誰が在宅勤務するかは、部署ごとにローテーションで決めている。

  • 自社も出社比率は7割程度。在宅勤務できる人はしてください、というスタンス。

  • 自社は、6月以降も原則在宅勤務としている。顧客対応関連(資料印刷など)で出社する社員が2割程度いる。


次回のテレワーク実務研究会は…

次回は、テレワーク時のコミュニケーションと労務管理に関する事項をメインに、参加者から挙がっている課題を議論します。

  • 日時:2020年6月26日(金)10:00~12:00

  • 場所:オンライン(GoogleMeetを使用)

  • 参加費:無料

  • 参加対象者:企業内のテレワーク推進担当者

  • 参加方法:開催日の2日前までにお問い合わせフォームより参加希望の旨ご連絡ください。