弁護士 川久保 皆実 オフィシャルサイト

業界内で一目置かれる労働者側弁護士が語る「労働事件の勘所」②

前回の備忘録の続きです!

2.解雇事件について(続き)


  • 業務上横領による解雇の事案で解雇無効とするのは非常に困難。ほぼ救えない。1000円程度の横領でも解雇有効とされうる。もっとも、前例との均衡を見て、解雇が厳しすぎる場合には解雇無効となる余地あり。

  • 経費の不正請求による解雇の事案では、労働者が積極的に使用者を騙しているとはいえない場合(ex.転居の事実自体は隠していなかったが、住居手当・通勤手当の変更届を出しておらず、同手当を不正に受給していた場合)には解雇は厳しすぎるとして無効になる可能性あり。

  • 業務外の犯罪を理由とした解雇の事案で、その犯罪が略式手続で済んだような場合には、労働者側は大体勝てる(解雇無効となる)。業務上の犯罪と業務外の犯罪では大違い。

    ・鉄道会社職員が業務外で痴漢した場合であっても、当然解雇が有効となる訳ではない。

    ・公務員が飲酒運転した場合の懲戒免職については、公務員の特殊性が考慮される。

    ・教師の性犯罪については、通常よりも解雇有効になりやすい。

  • 配転命令違反(拒否)による解雇については、はじめに退職勧奨してから配転をした場合には使用者に違法目的があったとして解雇無効になりやすい。

  • 解雇について裁判で争う場合には、雇用保険の仮受給を使用する。本受給とは異なり、失業認定に行く必要がない。

  • 賃金仮払仮処分については、半年暮らせるだけの貯金があると保全の必要性は認められにくい。

  • 解雇中に他社で正社員として就労しても、賃金請求権を失うことはない。

  • 裁判所としては、復職にこだわるなら労働審判ではなく本訴で解雇を争うべきと考えている。

  • 和解時の条項として、

    ・解雇撤回和解日付合意退職とすると、解決金は賃金と評価されるので、雇用保険給付の返還が必要になり、かつ所得税課税が発生する。⇒労働者にとって不利

    解雇撤回解雇日付合意退職とすると、解決金は賃金ではないと評価されるので、雇用保険給付の返還が不要となり、かつ退職所得として課税処理できる。⇒労働者にとって有利


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